ライバル製品に比べて、竹内製作所の製品に足りていないところはどこなのか。ライバル製品よりも優位に立って、販売力を高めるためにはどんな建設機械を作らなくてはいけないのか。マーケティングの観点から、開発の上層部、営業、販売店も含めて協議して、大枠のスペックや販売価格を決めていく。2019年に始動した新機種プロジェクトのコンセプトは、こうして固まっていった。
SECTION 01
10年後も必要とされる建設機械を
これまで竹内製作所になかったサイズで、コンパクトでありながら力強い。取り入れられる機能は全部入れる。コンセプトが決まった後は、プロジェクトリーダーを中心に、さまざまなパーツで構成される建設機械を、8つのグループが受け持ってプロジェクトを進行した。
コンセプトを受けて私に降りてきた要望は、搭載したい機能を具体的にどのように形にするのかを考えるということでした。新機種開発は初めてだったので、私の直属の上司にも間に入ってもらいながら進めました。
前回のモデルチェンジは10年前。つまり、 10年間売れる建設機械を設計しないといけません。ですからコンセプトを決めることは、10年先を見るということなんですね。未来のことを見通すのは難しいので、ちょっと無理してでも搭載できる機能はできるだけ多く搭載したいな、と。
実際にどういう機能を搭載しようか頭の中で考えて、それを試作機でどんどん試しました。自分が運転手だったらこうやったら楽だなとか。お客さまがわかりやすいだろうなとか、そういう目線で考えていくと、こういう動かし方をした方がいいよねとか、こういう操作をするのが楽だよねとかって考え方になる。1番大事なのは、まずどういう機能にするのかをしっかり固めてから進めること。でないと、考えた結果がいいのか悪いのかを判断できなくなってしまいますから。このプロジェクトで、初期段階にこそ最も時間をかけるべきだと実感しました。
SECTION 02
過去と未来の信頼を繰り返しテストする
クローラーローダーは運搬、整地が主な役割。ヨーロッパでも導入が進んできているが、国土の広い北米が主な出荷先だ。アタッチメントを交換することで機能の拡張性が高く、広い場所で重宝される。
国によって機械の使用方法は異なります。欧米では、ショベルカーであれば先端のアタッチメントを付け替えて、掘削作業以外にも、粉砕、草刈りなどを行います。
同じくクローラーローダーにもさまざまなアタッチメントが用意されています。それを付け替えることでフォークリフトになったり、木を運んだり、除雪機にもなるんですよ。でも、どんな新しい機能を増やして利便性が向上しても、今使ってくださっているお客さまをがっかりさせないようにしないといけません。
従来機とは操作方法も変わっているので、調整にはだいぶ苦労しました。お客さまにダイレクトに評価いただくポイントは、かなりの時間をかけて何回も試作品でテストします。例えば走行するためのレバーの傾け方ひとつとっても、 現行機種とフィーリングが変化してしまっては繊細な作業ができません。現行機種のどこが支持されているかを把握した上で、いい部分は絶対に残すと決めながら新しい機能を付加することを大切にしています。実際に車両に搭載してみて何度も走行しながら試しました。
北米のさまざまな販売店を訪ねて話を聞いてみると、圧倒的に品質の高さを支持してくれています。何らかのトラブルがあって機械が止まると、仕事も止まることになります。仕事が止まるということは、納期に間に合わなくなるということでもあります。竹内製作所の製品に期待されている信頼を得るためには、入念なテストが不可欠です。
SECTION 03
行き詰まることで新たな技術が生まれる
操作を制御するための装置はプログラムを書いて車両に搭載する。少し書き換えては試乗することを繰り返して調整していく。プログラムの書き換えは1000回以上にも及んだ。検証プロセスの中で行き詰まることもある。その時に救いの手を差し伸べてくれるのは、周囲にいた先輩や同僚の存在だった。
私の場合、行き詰まったらいろんな人に相談します。ああでもないこうでもないと周囲に言われながら考えますね。仕上げのイメージを伝えてアドバイスをもらって、それなら自分だったらどうプログラムに反映できるかを考えるんです。なので、自分一人で考えることは少ないですね。新しいアイデアがポンポン出てくるわけじゃないし、いろんな人としゃべりながら、じゃあこうしたらいいんじゃないかという考えがぽっと出てくるような感じです。
まず自分の意見を言うことが大事ですね。悩みを伝えるだけでは「じゃあどうするの?」と言われてしまうだけなので。自分はこうすればいいと思うんだけど、どう思いますか?という聞き方をしているから意見をもらえるんでしょうね。
入社してからコミュニケーションには困ったことはあまりないですかね。質問したらみんな親身に相談に乗ってくれるので、やりやすい環境です。思いついた時に話しに行きますし、話してるといいアイデアも浮かんでくるんですよね。結局自分だけで考えてるより圧倒的に早いんです。
新しいアイデアは行き詰まった時にこそ生まれます。彼はこのプロジェクトで3~4個特許を取っているんですよ。でも行き詰まらなかったら、特許は出てこなかったと思いますね。自分が「できるだろう」と思ってたのにうまくいかなければ、どうしたらこの問題を解決できるんだろうと考えるわけです。そうすると、誰もやったことない領域に行かないといけないので、特許を取得するようなアイデアが生まれるのだと思います。
SECTION 04
すべてをやり遂げた経験がくれた自信
その後もプロジェクトは一歩ずつ前進し、いよいよデビューの時を迎える。工場のラインに乗り、量産され始めたクローラーローダーが、アメリカの取り扱い店で1台売れた、2台目が売れたという知らせが聞こえてくる。それでもまだ終わりではない。実際の現場の声を取り入れて改善を続ける。
気づいたらラインに乗って量産されていたんです。自分が真剣に考えて作った建設機械なので、量産されているのを見ると、やはりとても嬉しいですね。でも嬉しい気持ちの中に半分は不安や緊張もあります。
量産され始める頃にはもう違う仕事をしてるもんね。量産され始めたと言ってもこの先もちょっとした改良は必要です。ラインに入ってももう少し組み立てやすくした方がいいとか。常に改善、改善ですね。2年ぐらい量産してようやく改善点がなくなる感じです。ですので、1年ぐらいは何かしらの改善があると思います。
改善は続くとはいえ、新規開発を1機種やりきると、こうやったらうまくいくはずという一連の仕事の流れが身につくので、仕事はやりやすくなりましたかね。同時に、こうすればより良くなるんじゃないかという改善点もだんだん見えて来ました 。それでも、新しいものを作ることは、この会社ならではの経験だと思うので、もっと新しいものを作りたいと、いつも思っています。なので常に新しいものを作り続けます。
それはまた、お客さまに喜ばれちゃうね。