03

ミニショベル向け2ピースブーム開発プロジェクト 未経験を支える仲間がいる

  • 若手主体のプロジェクト
  • 前例なき挑戦

竹内製作所の新製品開発は、通常、市場のニーズに応える形で進められる。しかし、今回のプロジェクトは異なっていた。開発部長が今後の電動ミニショベルの普及に向け、排気ガスを出さないという電動式の特徴を最大限に生かせる屋内や地下での活用のために、「もっとコンパクトにすれば、より多くの現場で使える」とひらめく。こうして自社から市場へ新たな価値を提案しようと考えたことが、このプロジェクトの始動へと繋がった。

MEMBER
  • 開発部開発試験課
    2023年新卒入社
    高等専門学校で機械工学を専攻。新入社員研修では品質部と製造部で製品の仕組みや強靭さの秘訣を学ぶ。現在はびんぐし試験場で試作機の組み立てや耐久試験などを行っている。
SECTION 01

試作機改造チームが挑んだ初めての設計

「ブーム」とは、ショベルカーの「腕」の部分。一般的には「モノブーム」と呼ばれ、先端まで伸びる腕の途中で1箇所だけ曲がる仕様だ。モノブームに対し、屈折部分を2箇所設けた「2ピースブーム」を導入することで、全長・全高ともにコンパクトになり、狭小空間での作業が可能になる。開発部長が描いた一枚の簡単なスケッチが発端となり、このプロジェクトは始まった。

どのようなメンバーだったのですか?

試作機のアップデートを主に行っている3人でした。普段は、エンジンや油圧部品の組み換えや、冷凍庫のような低温環境や40~50℃の高温環境での耐久テスト、掘削機能を確認する仕事をしているので、設計段階から開発に携わるのは初めてのことでした。

どのように設計していったのですか?

元々部長からは、「とりあえず動けばいいよ」と言われたんですね。「量産されているモノブームを途中で切断して、新たな関節を作って。顧客評価会でお客さまに見せるだけだから、強度は考えなくていいよ」と指示されました。メンバーのうち二人は別部門での溶接作業の経験があり、彼らと相談する中で、「ただ作るだけじゃ面白くないから、それなりに強度も考えてやってみよう」ということになりました。ただ切断するだけだと繋ぎ目もありませんから、どのように繋ぎ合わせるか、また補強の板をどう入れるかを考えながら設計していきました。
SECTION 02

より困難な状況でも挑むという決断

展示会まではわずか2か月半。通常のプロセスであれば、ある程度の仕上がり段階でお客さまに見せ、それをさらに改善して製品化を進める。しかし今回は、いきなり展示会で披露する一発勝負だった。作り直しがきかないスケジュールの中で、一度で完成度の高い試作品を仕上げなければならない状況は大きな困難であった。

具体的にどんな困難があったのですか?

はい、開発期間が限られている中で、特にブームの設計に関しては大きな挑戦がありました。ブームの関節部分を伸縮させるための油圧シリンダーという部品があるのですが、以前お客さまから「シリンダーがブームの両側にあると、操縦室からの視界に死角ができてしまう」というご指摘をいただいたことがありまして。今回の設計では、部長からシリンダーを片側だけに配置してほしいという指示がありました。

その実現が難しかったのですか?

もちろん、初めての挑戦でしたので。でも、何とかうまく実現できました。それ以上に大変だったのは、2つの異なるアイデアを同時に実現しようとしたことなんです。実は2種類のブームの設計を並行して進めていたんです。シリンダーが片側だけだと関節を支える負荷が大きくなります。私たちチームからはシリンダーをブームの『腕』の内側に完全に収納するという案も出ていました。

なぜ2案同時進行という道を選ばれたのでしょうか?

部長のアイデアと自分たちチームのアイデア、それぞれの良さを競争させたいという思いがあったんです。ハードルが上がると思いましたが、どちらか一方に絞るのではなく両方の可能性を追求したいという、メンバー全員の強い意志がありました。
SECTION 03

壁のない環境が完成に近づける

新入社員として入社し、研修が終わってまだ1年も経ってない段階で、知識、社内ネットワークともにまだまだの状態ため、周囲との協力は不可欠。「あの部署の方と知り合いだから頼んでもらおう」と、互いの人間関係を駆使してプロジェクトを進めていった。

2種の試作品を完成させるためにどんな工夫をしましたか?

部品を共通化したり、使用する部品の数そのものを減らしたり、強度が高い構造のまま溶接のしやすさを追求したりしました。実は、2種類の2ピースブームを同時に開発することは、周囲からは本当にできるのかと心配されていたかもしれません。でも自分たちで決めたことですから、メンバーでたくさん話し合って効率化を図りました。

周囲の助けはありましたか?

普段、ブームを設計している先輩社員の方と話す機会があったので、そのタイミングでアドバイスをもらいました。何の壁もなく誰にでも相談できる環境なのは、すごくありがたいですね。それでも完成したのは前日でした。テストする時間もなかったので、実際に強度がどれくらいあるかわからないまま、ぶっつけ本番で展示に挑んだんです。

どちらの案が採用されたのですか?

部長の案でした。私たちの案はブームの内側が窮屈で、耐久性に課題が残るという納得のいく理由でした。でも、どちらの案も完成させたことは大きな自信になりました。
SECTION 04

背中を押してくれる声が支える

いよいよお披露目となる展示会。資料をお客さまに配布した。ある国のお客さまからの「誰がこんな機械を頼んだんだ?」という声が耳に届く。緊張が走る中で、 2ピースブームのミニショベルが展示会場に並んだ。

展示会での反応はどうでしたか?

お客さまの反応は予想以上に上々でした。実は、あまりに好評で、「ちょっと掘ってみたいんだけど」との声もあり、OKを出しました。正直、強度に確信がないままお客さまに使われて、しかも関節部分に負荷がかかる使い方でしたので、ヒヤヒヤしましたね。

需要はありそうですか?

お客さまの反応から、部長が当初考えていた通りの確かな手応えを感じました。特に「腕を折りたたんで小型化する」というコンセプトは、室内や中庭といった狭い場所での作業に大きな需要があるようです。多くのヨーロッパのお客さまからは、密集した旧市街で古い建物を残したまま地下室を掘る作業で使いたいと言われましたね。

プロジェクトを通じて、竹内製作所らしさをどのように感じましたか?

竹内製作所には、他人のモノマネではダメだという社風があります。また、元々町工場から始まった会社なので、垣根なくいろんな部署と連携できる一体感があります。誰も作ったことのないものを作れるのは、社員一人ひとりの顔が見える、この規模感の会社だからこそだと思います。「ワールドリーダーとして世界一の製品を作っている」という誇りを社員全員が持てるようなものづくりに、これからも取り組んでいきたいです。